2014-09-03

暗躍する尉繚(うつりょう)

 尉繚については「史記・始皇本紀」から次の二つが判っています。
1.秦王嬴政(えいせい、後の始皇帝)に六国を滅ぼすための献策を行い、嬴政はその計に従った(実行は李斯(りし))。
2.嬴政の人相から見て取れる性格を批判して逃げようとするが、嬴政が硬く引き止めて尉として遇する。
 さらに、武経七書(中国の代表的な古典的兵書)の一つである尉繚子を書いた人物ではないかとの説もあります。

 物語を創るとき、最初は尉繚を李信の軍師にしようかと思いましたが、嬴政の性格を批判している点から逆に敵対勢力として暗躍させた方がしっくりすると感じました。ただ、人相からみた性格判断だけで敵対するのは動機が弱いなと思って、動機を創造することにしまた。

 史記によると尉繚の出身地は魏の大梁(たいりょう)です。大梁と言えば本書でたびたび登場する信陵君(しんりょうくん)に思い当たります。信陵君は嬴政に恨まれて姦計に嵌められ、無念の死を遂げます。そこで、信陵君を慕う者が嬴政に復讐するという設定なら無理がなろうと考えました。できれば肉親の方がより恨みが深いだろうと思ったのですが、あいにく名前からは直接の関係は推察できません。それでは隠し子にするか、と考えたところで例によって妄想が炸裂し、信陵君が邯鄲にいたときに趙姫との間で設けた子としました。

 次に復讐の方法ですが、頭の切れる人物ですから表立っては行動せず、裏で暗躍させることにしました。およそ嬴政に迫る身の危険はすべて尉繚がからんでいても不思議はありません。李信はさすがに尉繚を怪しいと感じますが、尉繚は巧みに本心を隠し、常に第三者を立てて暗殺を目論見ます。もちろん第三者と会うときは老人に変装して身元がばれないようにします。

 はたして尉繚の目論見はいかな結末を迎えるのか、根暗な尉繚の存在を浮かび上がらせた本書をご覧あれ。

テーマ : 歴史・時代小説
ジャンル : 本・雑誌

2014-09-09

張良、鉄槌で「撃つ」

 張良は、秦の始皇帝を博浪沙(はくろうさ)で襲撃したことで有名な人物です。
 史記(世家・留侯世家)や漢書(列伝・張陳王周伝)を見ると、30キログラムの鉄鎚を作って、始皇帝を狙って「撃った」と書かれています。
 【注:本書では鉄鎚を鉄椎と記載しています。パソコンの漢字変換で出てきたものそのまま使ってしまいました。字義的には間違いでは無いかもしれませんが、まぁ誤字ですね。浪を狼に間違えるとは情けない(i_i)】

 「撃った」の解釈は、ハンマー投の要領で飛ばした、というのが一般的解釈のようです。しかし30キログラムの重さのものをどれだけ飛ばせるでしょうか。現代人の記録では7キログラム超のハンマーで90m弱が限度のようです。単純に換算すると30キログラムでは20mぐらいしか飛びません。仮に現代人の2倍の屈強な人物がいたとしても40mです。少なくも平地でそんな近距離で鉄鎚を振り回したら、すぐに護衛に射殺されるのが落ちでしょう。
 だから、崖の上から狙った、という説もあるようです。しかし博浪沙は河沿いの平野部で、急峻な崖があるようには見えません。まぁ、数m程度の段差はあってもおかしくないので、そういう崖から狙ったというのも無いとはいえないでしょう。

 でも私は「撃った」と「投げた」は違うはずだと疑問を感じました。文字通り何かの装置で「撃った」可能性もあるのではないかと考えました。
 この時代、すでに弩(ど)は存在しており、矢の代わりに石や鉄鎚を打ち出すことも可能でした。しかし30キログラムとなると弩と言えどもそんなに飛ばせなかったと思われます。
 次に思いつくのは投擲機(投石機)でしょう。「トレビュシェット」と呼ばれる投擲機は140キログラムの石を300mも飛ばせることができたようです。残念ながらトレビュシェットが使われたのは西暦1000年以降で、張良よりかなり後の時代です。しかしよく調べると、トレビュシェットはアルキメデスが発明したのではないかという伝説がある(確たる証拠はなし)と分かりました。

 アルキメデスは、前287年生まれ、前212年没ですから、張良が襲撃した前218年はまだ生きていて69歳ぐらいです。この歳なら、すでに投擲機を発明していて、その資料が東方へ伝わっていてもおかしくないでしょう。そこで、本書では張良が「あるきめですの書」を参考に投擲機を作って襲撃するストーリーにしました。

 張良が作った投擲機は最終的に百発百中の精度を確信できるほどの完成度になります。しかし襲撃は失敗します。それは何ゆえか? 興味のある方はぜひ本書をご一読ください。

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ジャンル : 本・雑誌

2014-09-21

書店本部で補充判断?

 以下の記事、さっき確認したら補充されたはずの5店舗の在庫がなくなっていました。5店舗同時に売れたというのは考えにくいので、システム誤登録だったのかも。ぬかよろこびかぁ。。。。(i_i)

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 先日、京都を中心に展開している書店で5店舗同時に補充がありました。各書店の店頭在庫が日に日に減って陰鬱な気分になっていたのですが、久々にどっと補充されて歓喜涙々の雄叫びを上げました。

 喜びが一段落して、この書店の在庫店舗数の推移を見ると、残念なことに長らく補充が無い状態が続いていました(下図参照)。5店舗同時の補充ということは書店本部が判断したとのでしょうが、逆に言うと各店舗は補充を書店本部に任せているということなのかもしれません。

 書店本部はおそらく売れ筋中心に発注や配本を決めているのでしょうが、売れ筋のみになると書店の特徴がなくなるので、マイナーな本も多少は選んでいるのでしょう。マイナーな本と言ってもそれこそ星の数ほどあるので、その中から何らかの特徴を認めて本書を選んでもらえたのは、やはり感激すべきことですね。

 本書のどこがこの書店本部さんの目に付いたかは不明ですが、ともかく色々な点から本書の特徴を紹介して、他の書店本部さんの目にも留まるようがんばりたいです。

特定書店の在庫店舗数

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2014-09-28

本書登場の中国地名一覧

 本書の巻末に、131の地名・地方名の一覧を付けてあります。なるべく現在の住所(省・市・県・村)を特定して記載してあります。さらに現在と当時の地名が異なる場所は、なるべく地名の変遷を書き加えています。

 元々はWebでちょいと調べられる範囲で「なるべく正確に」と思っていましたが、Web情報にはけっこういい加減なものが含まれていると分かりました。たとえばWikiの「中国の首都」のページに「野王」の位置が「河南省駐馬店市泌陽県」と書かれていますが、正しくは「河南省焦作(しょうさく)市沁陽(しんよう)市」です。おそらく、沁陽を泌陽と見間違えたのでしょう。
 そこで、もう少し正確を期する必要があると思い、以前のブログ(5月9日)に書いたように地名辞典や古地図を買いました。まぁ、それでも分からないものは分からないです。何しろ2千年以上前の地名ですからね。

 地名だけでなく、川筋の変化も困りものです。特に黄河は、下流(平野部)では天井川(川底が周囲の土地より高い)となっていて、たびたび流路が変わっています。流れが変って、河から見た町の位置が南/北逆転した所も少なくありません。これには最後まで悩まされました。

 たとえば、張良の始皇帝襲撃で有名な博浪沙(はくろうさ)は現河南省新郷(しんごう)市原陽(げんよう)県近辺にあります。下図グーグル・マップで”古博浪沙遺址”を中心に表示してます。これを少し南に移動させると黄河が見えてきます。ところが当時は博浪沙の北を黄河が流れていたようです。本書の最終校正段階でこれが分かって、大慌てで南/北の記述を修正しました。


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プロフィール

浅水伸彦

Author:浅水伸彦
李信の小説を読みたいのになかなか出てこないので、自分で書いてしまいました。

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